番外篇 名鉄美濃町線
名古屋鉄道美濃町線は、1912(明治44)年に美濃電気軌道として神田町（後の岐阜柳ヶ瀬）〜上有知（後の美濃町）間が開通、
その後名古屋鉄道と合併し名鉄美濃町線として運行された。
1970(昭和45)年田神線が開通し、新岐阜駅（現名鉄岐阜駅）への乗り入れが開始され利便性が図られたが、自動車交通の発達により乗客数の減少が進み、
1999(平成11)年に新関ー美濃間が廃止され、2005(平成17)年に全線が廃止された。
【 掲載場所 】
徹明町 - 野一色(併用軌道境界) - 野一色(白山神社) - 琴塚 - 岩田坂 - 岩田 - 上芥見 - 津保川橋 - 新関 - 関 - 名鉄美濃
徹明町駅跡。
「名鉄徹明町駅ビル」とその名を未だ残した細長いビルが静かに誇らしげに立っている。
１階の窓口のガラスに映る光景は変わっても、「電車きっぷうりば」「徹明町駅」と残る文字はそのまま。
比較的交通量の多い通りの真ん中に止まった、割と大きな車体の電車に乗り込むのは、
普通のホームから乗り込むのとはまた違ったわくわく感があったんだろうと思う。
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野一色駅付近、併用軌道境界。
綺麗にカーブを描いて専用軌道に入る路盤跡。境界標の痛み具合が廃止からの年月を語っている。
ここまでの道路は綺麗に舗装し直され、路面電車が走った面影は全く無いのに、
専用軌道が現れるとそこから急に電車が走っていた残香のような空気に変わるのが不思議。
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野一色駅付近、白山神社前。
虎柵で直角に仕切られた路盤跡が、太鼓橋の目の前をすれすれに通って鳥居の前を横切っていた。
真新しい灯籠の脇には、たぶん踏切警報機の土台。新旧の構造物が路盤跡を守るかのように寄り添って並ぶ。
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琴塚駅跡。
ホームと、そこに上がる階段が、まるで駅構造物の片付け残された残骸、とでもいうかのようにそのまま残る。
国道を走る自動車の目にさらされて、なんだか痛々しさすら感じてしまう思いに、やっと光景を切り取った。
手力雄神社への最寄りを示す石碑を建てた人も、もう多分、いない。
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岩田坂駅跡。
国道を登ってくると、左手にしばらく随伴する路盤跡に斜面沿いに打ち捨てられたようなホームが現れた。
まるで「野ざらし」のような白々しい色が生々しかった。
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岩田駅跡。
バス停避難帯に路盤跡を削られ、半分になってしまったホームがかろうじて残る。
半分で終わったことでホームが残されたと見るべきか、それとも、
道路の拡幅に合わせてやがて残り半分も姿を消すこととなると見るべきか。
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上芥見駅跡。
併用軌道脇の、およそ「駅」というには程遠い、狭く小さなホームが有名だった。
いつか来て見てみたかったその光景も、もう跡形もなくなってしまった。
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津保川サイフォン付近。
かつてここには津保川に２本の橋が掛かっていたと聞く。
各務用水橋は川底をくぐるサイフォンに代わり、線路橋も路線廃止で姿を消した。
川岸で用水をまたいだ小橋の土台だけが、ここに線路が走っていたことを語る。
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新関駅跡。
バスも入る駅前通りからの光景は、一見以前と変わらない。
駅舎に歩みを進め、改札口跡から向を見るとき、レールも枕木もはずされた駅構内の光景が目に飛び込み、
ここに電車が二度と来ないことを冷たく思い出させる。
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関駅跡。
先行廃止された、新関駅から先の部分を、無理やり曲げて持ってきた駅跡。
厳しいＳ字カーブをおいてまでも作った駅は、たったの６年でまた電車の姿が消えた。
未だに残るレールから生える雑草が今も風に揺れる。
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美濃駅跡。
岐阜へ続いていた線路は断ち切られ、道路に置き換えられた。
遠く美濃の町に置き去りにされても、車両たちは仲間たちと寄り添い、静かな余生を送っているように見えた。
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